【太鼓の響き】
私はまだ「医者」というものを信用していない。
よく考えれば、手放しで人を信用しなくなったということかも知れない。
今日、新しい病院へ行き、整形外科の医師の診断を受け、再度レントゲンとMRIの検査を受けた。
以前の病院で撮ったMRIやレントゲン画像は、小さすぎて、こんなもので診断できるのかと医師は呟いた。
「先生、私はもう治らないと言われました」と告げると、医師は答えた。
「そんなはずがない。治らないなんて嘘だ。半年かけて治そう」と。
大きな画像で見るMRIは、私の頚椎の変形がどのように酷いものかということを、ことさら示していた。
「さっそく、今日からリハビリに入るからね。まず、運動障害を起こしているから、首の周囲の筋肉を鍛えよう」
医師の指導の下、筋肉を鍛えることにした。
首を軽く牽引し、背中に電流を流し、今日のリハビリを終えた。
「がんばって、毎日リハビリに来るように。楽になるからね」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
頭を下げて、病院を出た。
それでも―――私の医者に期待はしてはいない。
皆、ある時期になると、一様に手のひらを反すのが医者だという疑念が拭えない。
「完治するまでには半年かかる。半年は病院にかかれるんだから、安心して治そう」
そう言っても、半年かかっても痛みは消えないのだろう―――とまた疑念が湧く。
私は、信長や秀吉の猜疑心が移ってしまったのだろうかと、苦笑いした。
もう、道はひとつだけしかない。覚悟して、一日一日を勝ち取るしかない。
毎日の病院通いは疲弊を増す。明日は心療内科の外来だ。実に憂鬱だ。
今日は英気を養って、明日に備えよう。
煩わしき日々。
それでも大丈夫。
私の往く道はどこまでも、一本の道でつながっているのだから。
戦国英雄に思いを馳せて―――戦の太鼓の地響きが聴こえるようだ。
いざや、人生の戦場へ―――。
悔いなき人生を飾らんや。